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清水均のフードビジネス短信

第4回 いま、そこにある危機 - 悪魔の誘惑

「すかいらーく」の勇気ある選択

周知のとおり「すかいらーく」は苦渋のMBO(経営陣による企業買収)により、株式を非公開とすることで、脱ファミリーレストランを目指そうとしています。そのことについての評価は分かれていますが、勇気ある選択であり経営陣が本当に飲食を愛し、縁あって働いている社員を大切にしたいという思いが感じられます。
村上ファンドの問題や個人投資家(株主)が急増する中で、本当に企業は誰のものかといった議論も盛んになっています。IT産業と並び、ベンチャー的な要素のある外食企業経営は、実際に多くの若手を含む経営者が創業から短期間に株式を公開し、創業者利益を享受したことも事実です。しかし、株式公開はあくまで通過点であり、そこから本当に右肩上がりに売上高や利益を継続して創出できてこそ、上場企業として社会的な経営責任が果たせるのです。

悪魔の誘惑と飲食業の原点

1店鋪当たりの売上高に限界のある外食産業は、当然店数を増加させることで継続企業として安定成長を図ります。その際に最大のメリットの一つとして「利は元にあり」とマス・マーチャンダイジングに取り組みます。そこに悪魔の誘惑が潜んでいるのです。外食大手になると食品関連メーカーからさまざまな商品開発のアプローチがあります。例えば、ファミリーレストランであれば、大量に使用するデミソースやホワイトソースなどが対象となります。

業者
「こちらが、今回サンプルをお預かりして仕上げました当社のデミソースですが・・・」
商品開発担当者や役員が試食をします。
業者
「現在、お使いになっているものを100点とするとどうでしょうか?」
担当者
うーん、少し味が落ちるね。まあ、95点くらいかな
業者
「よろしければ、原価を見ていただけますか」
担当者
えっ、今の65%の原価になるの!う~ん。役員はどう思われますか」
役員
「売上が伸び悩む中で増益を目指すには・・・。この程度の味のダウンなら許容範囲だろう。今度のメニュー改訂から変えてみよう」

となるのです。
翌年になるとまた、別の業者が同様の手法でやって来ます。そして、何年か後に気がついたら原価率は毎年低減し荒利益率が上がって来たものの、味はそれ以上に落ちていたのです。これは著名な大手外食企業の経営者から聞いた話です。

ここには飲食業の原点(商品力)とお客様の存在を忘れ、株主への配当を優先せざるを得ない経営の罠があります。しかし、このことは上場企業だけの問題ではありません。数店舗規模になった時から、悪魔の誘惑は利益と引き換えに多方面からやって来ることを忘れてはなりません。お客様と社員のために継続企業となるには、飲食業としての原点と本質を常に経営者として意識することが大切です。

フードビジネスコンサルタント(亜細亜大学講師) 清水 均

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