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神谷豊明のワインコラム

第11回 “逆転の発想”ボジョレー・ヌーボー

今年は当たり年

毎年11月末になると、世界中で儀式のようにボジョレー・ヌーボーが飲まれています。既に現地では買い付けが終わりブドウの収穫を待つばかりになっています。
今年のフランスは、ボジョレー・ヌーボー近年最大の当たり年である2003年の猛暑を思い出すような暑い日が続いています。この暑さがブドウの糖度を上げ、濃厚なジュースを取り出せるようになるため、早飲みするボジョレー・ヌーボーには最適な気候になりました。各輸入業者も今年の出来を期待して例年以上の買い付け量を記録し、11月の第三木曜日の解禁日一斉に出回ります。そのときには各メディアも大きく取り扱うことになるでしょう。

ここで隠れたボジョレー・ヌーボーの秘話をお話したいと思います。
ボジョレー・ヌーボー(“ヌーボー”は仏語で“新しい”という意味)は戦略的なワインでもあるのです。

取るに足らないブドウ品種「ガメイ」

フランスのブルゴーニュ地方の南にあるボジョレー地区は、古くから「ガメイ」と呼ばれる黒ブドウ品種が栽培され、それを原料として赤ワインが作られていました。ところが、このガメイ種は当時の価値判断からすると、全く取るに足らないブドウ品種でした。なぜなら、当時の赤ワインはボルドー地区の赤ワインに見られるように「このワインは熟成を要して、○○年後にならないと飲めない」というのがステータスで、その年数が長いほど高級に扱われていました。しかし長い年月の間、ワインを熟成させるには豊富な資金も必要で、小規模な生産者の多いボジョレー地区では、翌年のブドウ栽培の肥料や人件費を出すのがやっとでとても何年もワインを寝かせる事ができませんし、そのワイン自体も長熟には向いていません。

欠点を利点にしたマーケティング戦略

そこでボジョレーの人たちは「○○年後にならないと飲めない」ワインがあるのなら、「○○年以内に飲むことに価値のある」ワインがあってもよいのではないか?という逆転の発想に行き着きました。この逆転の発想を前面に出して、まるでお祭りかのように演出されたボジョレー・ヌーボーが、まず英国で成功してあっという間に世界的な赤ワインとして認知されるのに至ったわけですが、もとはと言えば、原料の「ガメイ」の“欠点”を“利点”としてしまったマーケティング戦略の結果として今日があると思います。

地域・原料の特長を熟知して考えられた戦略、自分自身を分析することが大切だと、ボジョレーの人たちは語っているように聞こえます。

-次号へ続く-

シニアソムリエ 神谷 豊明

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