迷えるナショナルチェーン(シリーズ3):1人10色
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清水均のフードビジネス短信(2007年度)
第9回

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  • 迷えるナショナルチェーン  −3− (3回連載)

 
 
  • 1人10色

 
  日本の外食業界を牽引してきた著名なナショナルチェーンのトップが5年程前に業界の変遷をこう例えました。

  10人1色(じゅうにんひといろ)の時代から、10人10色(じゅうにんといろ)の時代を経て、今は1人10色(ひとりといろ)の時代になっていると云うのです。外食産業という言葉も無い戦後から昭和30年代までは多くのお客様がいても、全員が同じニーズだった。それが、外食産業が発展する時代(1970年〜1995年頃)には、それぞれのお客様がそれぞれのニーズに合った利用動機で店を利用した。そして今は、1人のお客様が生活の様々なシーンで自分のニーズやウオンツに合わせて外食の様々な業態を使い分けていると言うのです。正に言い得て妙です。

  オーバーストアの小商圏化に対応する方法の一つに市場での競争に主眼を置く「競争戦略」が挙げられます。ハーバード大学のM.E.ポーター教授の「競争の戦略」が著名ですが、業界内で防衛可能な地位を築きながら競争相手に打ち勝つための戦略は、(1)コストリーダーシップ戦略 (2)差別化戦略 (3)集中戦略 の3つの基本戦略になるというものです。多少乱暴ですが簡単にまとめると(1)は低コスト製品を実現してライバル会社より優位な競争力でシェアの拡大を図るものです。(2)は市場での優位性を確保するため商品やサービスで差別化する戦略です。(3)は市場を細分化して捉え、その市場ごとのニーズに合った商品やサービスを投入するものです。あるいは特定市場に集中して特化を図り優位性を確保するものです。

  外食産業の場合、(1)の コストリーダーシップ戦略で成功しているイタリアンのナショナルチェーンや伸び盛りのラーメンチェーンがありますが、どちらも小麦粉を主原料としている点がコスト面での優位性を保つ背景にあります。低価格実現という点でおいそれと真似のできない業態です。

  業界内で圧倒的に多い中小飲食店が、1人10色のお客様のニーズやウオンツを満たしながらこの厳しいオーバーストア時代を乗り切り、地域のお客様に喜ばれるには (2)差別化戦略 と (3)集中戦略 しか無いと考えます。そしてその結論が専門店とクイックカジュアルという前号で紹介した業態転換及び業態開発なのです。

  どこかへ「何か」を食べに行こうと思った時に、その「何か」で一番先に思い浮かべることのできる店が、圧倒的に少なくなっています。大きな巨人(ナショナルチェーン)は一遍に変えることをしたくてもできないのです。その地域で小さな巨人になるためのポイントはここにあります。


フードビジネスコンサルタント(亜細亜大学講師) 清水 均

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