牛の涎(よだれ)(シリーズ1)
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清水均のフードビジネス短信(2007年度)
第19回

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  • 牛の涎(よだれ)  −1− (2回連載)

 
  「牛の涎」は少量ずつダラダラと流れつづけます。昔から商売の極意として「利益」を得ることの例えに使われます。その結果、繁盛が継続しロングセラーになれるのです。

  休日に久しぶりに鎌倉に出掛けてきました。お参りの後の楽しみは蕎麦(そば)です。鎌倉八幡宮に直近の老舗蕎麦店Mに立ち寄りました。昔から蕎麦をベースに天ぷらや鴨などを粋に盛り付けた変わり蕎麦や法事向けの蕎麦会席など、芸術的とも思える綺麗な蕎麦料理を提供する店です。店内は贅を尽くした老舗らしい内装、働く女性達もキビキビと仕事をこなしていきます。15時過ぎに立ち寄ったにも関わらず満席です。

  メニューの価格帯は立地の強みを生かし、強気一辺倒。単品の蕎麦の中で最も安く食べられるのは700円の御前せいろ。その他の単品の蕎麦は1200円以上であり、後は全て天ぷらやご飯とのセット物で1300円〜2400円といった値付けです。入り口にサンプルケースやメニュー表示があるので、お客様は納得して入るのです。しかし、蕎麦を楽しみに来ている高齢者も多く、メニュー選びに悩み時間がかかることも少なくありません。客単価は1600円前後と予想しました。駅付近に別業態の店舗も出しており、経営が順調なことを裏付けています。

  経営が好調なのは良いことです。それを作り出しているのは、高単価と驚くほど早い提供スピードにあります。しかし、肝心の蕎麦のレベルは不味くはありませんが、昔に比べると確実に落ちているのです。また、バリアフリーになっていますが、合理性を重んじる余りテーブルにはキャスターが付けられています。席替えの移動と掃除はしやすいでしょう。しかし、狭い席の出入りに脚がどうしても引っ掛かり、高齢者などが困る姿は店でも承知して見ているようです。また、商品提供より片付け優先・回転重視、お茶も頼まないと来ません。おまけに「蕎麦湯は要りますか」と聞かれる始末です。入店時に聞いた年配客の「こういう店は平日に来なきゃダメだな」も納得でした。

  次回は東京・荻窪の教会通りにある女性オーナーが蕎麦打ちから茹で、一品料理まで一人でこなすため長時間のかかる、正反対の蕎麦店を紹介します。鎌倉の老舗蕎麦店Mと対比しながら「牛の涎」について考えるきっかけになれば幸いです。

  (次回(その2)に続く)
フードビジネスコンサルタント(亜細亜大学講師) 清水 均
 
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