牛の涎(よだれ)(シリーズ2)
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清水均のフードビジネス短信(2007年度)
第20回

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  • 牛の涎(よだれ)  −2− (2回連載)

 
 
  『適正利益』には2つの意味があります。1つはお客様がその店を利用したときの価格に対するバリュー=価値です。価格は安いほど価値が高まり易くなります。かといって価格が低すぎれば企業が継続して安定して成長するための『適正利益』を失ってしまいます。価格設定はお客様と企業にとっての『2つの適正利益』のバランスを取ることでもあるのです。

  東京・荻窪の教会通りに、前回最後に紹介した蕎麦店はあります。荻窪でも2等立地の外れか3等立地ですが、知る人ぞ知る蕎麦の名店なのです。正に『成蹊』の例えがぴったりの店です。せいろ900円は前回紹介した鎌倉の老舗Mより200円も高いです。ちょっと蕎麦屋らしいつまみを数品取り、蕎麦に合う厳選された旨い日本酒を飲み、蕎麦で〆れば4000円近くになります。

  特徴的なのは、サービス担当のパート以外は女性オーナーが蕎麦打ちから茹で、一品料理まで、一人でお客様のオーダー順に1品ずつ調理するため、混み具合によっては、注文した料理が提供されるまで非常に時間のかかる店なのです。しかし、根強いファンが多いのです。話したことはありませんが、オーナーは当然ポリシーとしてこれを承知でやっており、このやり方を変えるつもりはないのです。待てないお客様は自ずと去るでしょうし、それも敢えて良しとしているのです。

  『量の拡大は質の変化をともなう』という言葉があります。前回の鎌倉の蕎麦の大型店は量の拡大を目指し、質が変化した例です。今回の荻窪の個人店は量の拡大を敢えて捨て、その代わり質を追求している例です。商売としてどちらが正しいかを問うつもりはありません。

  賞味期限改ざんの問題が問われています。この問題の本質も量の拡大にあります。『食』を扱う者の務めとして、経営者は「牛の涎」=『適正利益』について改めて考える必要があるようです。
フードビジネスコンサルタント(亜細亜大学講師) 清水 均
 
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