「ブショネ」という言葉を聞いた事がありますか?
「ブショネ」とは、コルク(フランス語で”ブション”)についた細菌がワインにダメージを与える事です。具体的な症状は、本来のワインにあるべき香りが無くなり、鼻に詰まるような独特な匂いに変化してしまうというものです。
味わいを損なうというよりは、香りが無くなるという表現があっています。正常なワインかダメージを受けたワインかの判断は難しく、ソムリエの考え方によって見解が違ったりもします。
ブショネの程度は様々で、ソムリエでも見逃してしまいそうな微妙な傷みの物もあれば、全くの素人である私の妻でも言い当てるような、はっきりとした物まであります。
私たちソムリエはこのようなブショネワインに出会ったとき、いつも難しい判断を要求されます。傷んだワインを提供しない事は当たり前ですが、当然傷んだワインも購入したワインであり、無償で交換することはお店のロスになります。輸入元・生産者も引き取ってはくれません。(保存状態の不良から発生する傷みがあるワインの場合は交換できます。)
お客様のため? ワインのため? 店のため? それとも自分のプライドの問題?
そんな葛藤のなかのソムリエの毎日です。
ブショネワインの頻度は、程度の低い物も含めば、5%〜10%程あると言われます。実際に交換するのはもう少し低いと思いますが・・・
最近では、生産者がしっかりとコルクの殺菌をしたり、加工したコルクまたはゴム製のコルク、オーストラリアやニュージーランドでよく見られるスクリューキャップなど、対応策を投じ、品質の向上に努めています。
先日、お客様に「このワインは劣化している」とクレームをいただきました。
実際のワインの状態は劣化ではなく、熟成のピークを過ぎたワインで自然酸化によって状態が変化したものでした。しかし、お客様の言われる意味も理解できたので、保存状態の劣化と熟成の酸化の違いの説明をしてご理解をいただけましたが、私の抜栓前の説明が不足していた事を反省しました。
ソムリエは毎日テイスティングを繰り返しているので、「当たり前」が頭の中で固定化されていきます。しかしお客様には「当たり前」は通用しません。
周到な準備・説明が“お客様の目線”で用意できること。これは、常に意識しないとできないことだと最近は強く感じています。
-次号へ続く-